» 2012 » 2月 » 10のブログ記事


先日発生したJX日鉱日石エネルギー水島製油所の海底トンネルでの事故…
いたたまれません。
被害者が早く発見されることを願ってやみません。

MSNの産経ニュースを読むと、「異常出水」、「想定外」という言葉が目につきました。
本当に異常だったのかもしれません。
本当に想定外だったのかもしれません。
しかしながら、昨今の建設事情を考えると、事前の(地盤)調査が軽視される風潮があるのも事実です。
十分な調査が行われず、それを想定外と呼ぶのは原発問題と同じ構造と言えそうです。

地盤調査は、有効に活用できそうな既往のデータがあれば、そのデータや既往文献などを参考にして、ある程度は省略することができます。
そして、一般的には、重要構造物については詳細な調査が必要とされており、そうでないものについてはそれなりの調査でよいとされていますが、重要かどうかは相対的な指標でしかありませんので技術者にその判断がゆだねられます。

今回の場合は、上述の意味での「重要」な構造物かというと、この海底トンネルの目的次第となりますが、完成後の重要性には配慮するものの、建設途中の重要性が軽視されがちなのも、このような事故の背景にあるのではないかと考えています。

今回のプロジェクトでは、地盤調査をしていないとの報道もありましたが、なぜこのようなことが起きるとかというと、地盤調査の費用が馬鹿にならないほど高額だから…と言えます。とはいえ、割高というわけではありませんのであしからず。調査にかかる資機材や人件費等を考えれば、決して高くはありません。
私が、数年前に担当した某所のLNG備蓄基地の地盤調査では、約50箇所、延べ?千mのボーリング調査で約1億円でした。調査数量・金額的には大規模な調査プロジェクトですが、調査方法はごく一般的なもので、これといって特殊な調査はありませんでした。それでもこの価格です。そして単価で見るとそこそこ安い方でした。

調査の目的は、設計(施工)に必要な情報を得るためと言えます。しかしながら、地盤調査は高価な投資をしても「物」としは報告書以外、何も残りません。それなのに高額であることが、事業主や設計者の判断を鈍らせているのでしょう。ましてや近くで行ったデータがあったりすればなおさらです。

勝手な推測になりますが、今回の事故の原因としては次のことが考えられます(※思いつきです)。
(1)トンネルの土かぶり厚(トンネルから地上までの土の暑さ)が十分に無かったためにトンネルが崩壊した。
(2)トンネル周辺の地層構造が、既往のデータと異なっていた。特に止水層となる粘性土層が異なり、水理条件が想定よりも悪かった。
といったことが思い当たります。思いつきですので、きっと他にも原因があると思われます。
詳しいことは、土木学会や地盤工学会、建設コンストラクションあたりが近いうちに詳細を掲載してくれるかもしれません。

ともかく、地盤調査を行っていないのであれば、それが原因であると云わざるを得ません。
事故を起こした鹿島建設の管理が悪いのはもちろんと言えますが、それだけで片付けられたくはありません。この背景には、技術的な裏付けもないのに、金額に重点をおいているであろう発注者側にも問題意識を持っていただく必要あります。
今回のように事故になったから明るみにでたものの、似たようなプロジェクトは他にもあると思います。
このような事故を回避するためには、発注者は、設計・施工者と施工監理者を同一業者にしないことに加え、設計~施工までの技術的な監査役として発注者側の立場で技術的なリコメンド行うオーナーズコンサルタントを使うことが必要になると言えるでしょう。
医療でいうセカンドオピニオンみたいなものですね。

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